vol.19『彼れを知り己を知らば、百戦して殆うからず』とは言うものの…

孫子の兵法書にある。勝利を予知するのに5つの要素があるらしい。①戦ってよい場合と戦ってはならない場合とを分別している。②大兵力と小兵力それぞれの運用方法に精通している。③上下の意思統一に成功している。④計略を仕組んでそれに気づかずにやってくる敵を待ち受ける。⑤将軍が優秀で君主が余計な干渉をしない。競技を強化する際のスカウティング活動とは多少の違いがあるものの、必要とする情報は入手しておくに越したことはない。今はインターネットが普及し世界の情報入手が以前よりも格段に進んでいる。オリンピックや欧州&世界選手権なども無料配信により座っていて世界トップのパフォーマンスをDATA化しやすくなってきている。喜ばしい限りである。ただし「逆もまた真なり」であるのも事実。そこの勝負でいかに勝つかが勝負の大きな分かれ目となる。自チーム、相手チーム、環境(大会、システム)、将来(考えられる可能性)などが最低限必要なエレメントになるのだろう。現在スペインで大会に挑んでいる女子代表、アジア選手権でアジアの王者奪還を目論む男子代表、対戦チームの分析など「準備」や「対応」に大忙しの日々だと思う。果たして現場にだけ任せておいてよいものだろうか?2009年だったと思う。アジア選手権で対戦したイラク代表は国のスポーツ大臣(日本だと室伏長官あたりになる?)が大会視察に来ていた。たまたま懇親会で同席になり少し話をした中で大変印象に残ったのは、「我々の国は今大変な状況です。私はこのハンドボールというスポーツを「使って」国を作りたい。」と熱く語られていたこと。この大会自体はイラクにとって大変厳しいものになった。ただ、その後アジア大会やアジア選手権などでJPN対戦した際苦戦を強いられた。明らかに「あの時」のイラクとレベルの違うチームに成長していた。ソウルOGの代表監督のリュウさんは欧州のコーチ達から当時「コリアのリュウはどの大会にもいるな。」と。結果韓国男子は銀メダルを獲得。ある競技団体は自国が出場していなくても世界を知るためにテクニカルレポート作成要員を世界の隅々まで派遣している。女子JPNと対戦したパキスタン?は1得点上げた。いつまでも「1得点」であるはずもなく、大きな一歩の先には「大きな成果」が待っているのではないか。自チームや相手チームの分析だけが大会の「総括」とはならない。アジア&世界のライバル国の「分析」も国力強化のためには必要。「脅威」を簡単に取り除くことはできないが、知っているのと知らないとでは大きな違いであることは明白。やはり「彼を知る」ことは大切なことである、と思う今日この頃である。

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