果たしてどっちでしょうね。考えると夜も寝られなくなっちゃいますか? そうでもないですよ。
実は双方どちらも欠かせないものなんですよ、本当に。それにどちらが先でも構わない。
代表監督時代に感じた「日本人アスリートの可能性」について、多少説明します。
JHAはJOCからの進言により、2000年に若年層から代表レベルまでの「一貫指導システム」をスタートさせ、現在に至っている。今回のオリンピックでも数人がこの事業から育ってきている。
内容や質について論ずるつもりはないが、「今までとこれから」については中央競技団体の公式プロジェクトとして常時精査は必要だろう。ただし、幸いなことに現在日本のハンドボール界にはグラスルーツ(発掘)、ボールASOBI、バルシューレ、ストリートハンド、ミニハンド、クラブチームカップ、小中高全国大会(にかかわる地方大会)、など新旧様々な形の「ハンドボールに触れる機会」が提供されている。我々の現役時代とは雲泥の差である。
であれば、コーチの皆さんにお願いしたいのは、子供たちがいつまでもハンドボールを好きになるような関わり方をしておいてもらいたい。土日祝日は日が暮れるまで友達と遊んだ、家に帰っても好きなスポーツのことを考えてる、ルールは自分たちで作って勝つための作戦を練る、負けたら悔しいからどうにかして次には勝つこと(上手くなること)を必死に考える、それらを友達と協力してうまくいったら大喜び、負けたら泣きながらまたまた考えて勝つための方法を生み出す、活動が「楽しい」であってもらわないと困ります。友達と協力する習慣、チームメイトとルールに則った正しい試合をする習慣、負けた時に後悔しないようプロセスから「闘う」習慣、最後の最後まで諦めない習慣、困難が迫ったときに考えて行動する習慣、などなど当たり前と思われるかもしれないが果たしてそうでしょうか?
団体球技がオリンピックやワールドカップなどでジャイアントキリングなどと称されて戦前の予想を上回る結果が出た際に必ず話題になるのが「ハードワーク」についてである。今回のバスケット女子のケースも同様で参考になることが多い。着目すべきは、「選手の自主トレ」である。チーム全体としてハードトレーニングに挑むことは今回のような自国開催の場合、比較的取り組みやすい。ただしそれだけでは十分ではない。そこを超えた選手の自主的な取り組みが「自信」を倍加させる。バスケ女子は合宿を重ねるにつれてほとんどの選手たちがチームトレーニング以外の時間に3ポイントを自主的に行ってきたらしい。もちろんコーチングスタッフから強制されたものではない。ゆえにあの土壇場のベルギー戦、同点ではなく勝ち切るための3ポイントを選択できた。ここがポイントである。前述したように自国開催という状況において心血注いで強化すること、チームパフォーマンスの中に自分の役割を見つけ取り組むこと、根底には「好き」でなければ叶うことはない。この「好き」こそ前述した若年層にハンドボールを触れさせることのできるコーチの皆さんの大きな役割である。「科学的スパルタ」なトレーニングはシニアスタッフが可能にする。ただし、「好き」まではなかなか手が回らない。競技が国際大会で常に結果を残すには、若年層に「指導者の自己満足」のような活動に触れさせるのではなく、「好き」になっていつまでも競技に向き合う習慣を身につけさせることがのちにそのコーチの評価に繋がると考えざるを得ない。育成と強化は別物ではない。国際競技力向上には、若年層にかかわる指導者の方達の頑張りがなければならない、実は!