私も感化されたことはあった。
「ファン」「審判」「大会関係者」などを選手と同じゲームを構成する一員であるとは受け入れていなかったことが。
ただ、私がラッキーだったことは、コーチ&監督という立場を様々な条件下で任されたことによって、相手味方のアスリート、ファン、審判、大会運営者、にある程度の「リスペクト」を持つことが出来たことと、自分なりに多少の座学で「スポーツ」を見つめ直す機会をつくれたこと、並行して周りのスポーツ仲間たちが各々の活動の中で携わる競技に真摯に向き合う姿勢を学ばせてもらったこと、などそれまでの競技に対する価値観とは違う、もう少し大きな視野を持つことが出来たことである。
「審判の判定」に対しては、本当にクレームや文句を言えるようなプレーであったのか?もちろんそのこと自体もよくないリアクションだが、正直中には「明らかな」ということもある。だが、少し下がって考えてみると大半が「選手のスキル」から発生していることがほとんどである。多くの監督コーチは実は経験があるだろう。例えば、ウィングショットを打とうと飛び込んだ際、7mスローかプッシングか?
デンマークのレジェンドレフトウィングのラース・クリスチャンセン曰く「ウィングはDFにコンタクトされないように素早くジャンプする必要がある。DFのコンタクトを受けるということは自分のタイミングが遅い、怪我のリスクを回避できない、プロは簡単に怪我するわけにはいかないからね。レフェリーのジャッジについてはトレーニングできないよ」と。なかなか深いい話。ソ連時代からロシアはどこの土地で試合をしても「アウェイ」の扱いを受け、時には「中東の笛欧州版」なんてのも結構あったらしい。そこでロシアのとった戦法は大型のバックプレーヤーを育成することにあった。ウィングで絡んだり、スクリーンをかけても、フェイントを仕掛けてもすべてオフェンシブファウルをとられる。よって誰が見てもゴール判定するしかない「ディスタンスショット」それも少ない歩数「ゼロイチ」で打たなければならない。そのような状況を逆手に取り、したたかに強化を進めた結果、世界で最も強力なバックプレーヤーを輩出する国となった。この二つの例は特に印象深く、いずれもレフェリーの判定をリスペクトせざるを得ない状況下でもしっかり「自己のパフォーマンス」にフォーカスしている点にある。
コーチの皆さん今一度パフォーマンス中におけるアスリートの個のスキルにフォーカスしてみてください。レフェリーやオフィシャルにクレームつけることが果たして正しいかどうか。ましてやレフェリーにプレッシャーをかけて自分たちに有利なジャッジを下してもらおうなんて姑息なことは考えないほうがいいですよ。そうした瞬間にアスリートのレベルアップをコーチ自らが阻害していることになりますから。もうバレバレですから、観客にも双方のアスリートにも。「普段何してるの?」って。
プレーを構成する要因が集まらなければゲームは成立しません。判定を下すレフェリー、少しでもよいパフォーマンスをしてくるアスリート&チーム、みな自分自身を高めてくれる頼もしく有り難い”Good Fellow”です。「敵」ではありませんよ。もし万が一コート内外に「敵」がいるとしたら「内にあり」ってことで手打ちといきましょう。