以前サカチャンネルにパスとパスワークのスピードについてツイートしましたが、トヨタ車体、湧永、日本代表でも同様の取り組みを続けてきましたし、大学やJHLチームのトレーニングを見る機会にも同様に取り組んでいます。
中田英寿さんの現役時代「キラーパス」なる言葉が新聞の紙面やニュースに取り上げられたことがありました。当時は中田選手の特別なスキルといった取り上げでしたが、果たして今のサッカー界からそのようなコメントが聞こえてくることはなくなりました。
これは「競技の進化」の事例の一つとして捉えることができるのではないかと思います。
昔は「特別なもの」だった事が、今では当たり前になっている。桐生選手が10秒の壁をブレイクすれば「我も」となるのは見えていた。海外リーグでプレーするアスリートが出てくるとは到底考えられない時代から、そうではない時代に。日本ですら認められなかった二刀流が海を渡った海外それも世界最高峰と言われる土地で勇躍する。ひょっとすると二刀流が常態化する可能性大。スポーツの持つ「強さ」に、非日常を日常にするという行動があると考えられると何やらハンドボールにおいても取り組み次第で世界を驚かすことも可能?!
ハンドボールのパススピードは私が代表監督を務めた時期に掲げた一つの「課題」でした。これは経験上世界と闘うには「何を磨くのか」を考えた上での答えだったし、ストロングポイントであるはずが、「まだそうでなかった。」と認識もしていた。2010年だったとか、シーズン前に代表チーム強化のまとめの欧州遠征を3年間継続しました。デンマークを強化拠点に時にはフランス南部にも渡ったりもしました。その年はポーランドのオーレンカップに招待され、THWキール(ドイツ)と対戦する機会に恵まれました。他にはスロベニアのゴレーニエ、地元ポーランドのビスラ・プロック、などが出場。
キールとの対戦を終えた翌日、たまたま朝食会場で会ったキム・アンダーソンと試合について雑談。キム曰く「Japanの選手のスピードは素晴らしい。私との1:1の勝負で私はすべて負けていた。ただし継続できないから助かった。もしすべてが得点になっていたら、私はアルフレッド(キール監督)に殺されていただろう。」「今日は試合がなくてよかった。私の足は今日動くことはできない。大変ハードになっている。」と。私がスウェーデンで家族と時間を過ごしたことを話したこともあり、1時間くらい話してくれた。大会は1勝2敗の3位で終えたもののチームの状態は徐々に成長していました。ただし、強敵との厳しい試合の局面で精度の高いプレーを1試合、1トーナメント、1シーズン継続するにはまだまだ時間が必要であった。
大会終了後おなじみのガーテンパーティーが体育館横のホール(と言っても、テントを張っただけ。)で行われた。その際キールのキャプテンであるマルコス・アームからこんなコメントを引き出した。「彼ら日本人選手のスピードは世界トップクラスのレベルだと思う。しかし、パスのスキルがまだ十分でないため、そのパススキルとスピードが選手のスピードプレーを殺している。彼らは可能性を持っているが今は十分ではない。」と。痛いところを突かれた。ただこうも「もしJapanがそのスキルを身につけることができると、攻撃において次の国際試合では、欧州を驚かすことができるかもしれない。ただし、ハンドボールにはディフェンスも必要だよ。」とも。ウィンクするなっつうの。
日本代表の活動後は必ず報告書を協会に提出する。その際ある役員から直々に「パスのことについて話がよく分からないということで理事会で話にあがっている。」ということだったので説明したところ「?」という雰囲気だった。「なかなか時間がかかりまっせ」とスタッフに話をしたことを覚えている。
非日常を日常にする努力がスポーツの良さであり強さであるとするならば、施設、環境、条件にとらわれず、コートの中で取り組めることがまだある。ハンドボールはブルジョアのスポーツではない。